248.脳の働きを活性化する紙媒体

東京大学の酒井邦嘉教授は次のように述べています。『人間の脳は、いつ、どこで、誰が、何をしたかをエピソードとともに覚える。紙の教科書であれば、どのページのどこに書かれていたかの位置関係や、手触りといった様々な手がかりがあり、内容を深く記憶することが可能になる。(中略)スウェーデンのカールスタード大学などが行った実験では、大学生を二つのグループに分け、パソコンの画面と紙とで、同じ内容を読んだ際の理解度を比較した。一つのグループは電子ファイルにした文章をパソコンの画面で読み、もう一方は印刷した紙で読んだ。読解テストを実施したところ、紙で読んだグループの方が成績が高かった。紙の方が与えられた情報を脳の中で関連した記憶と結びつけ、よりよく理解することができていた。』

また、大人においては『紙の手帳に予定を書き留めると、スマートフォンなどの電子機器を使う時よりも短時間で記憶できた。手帳に書き込んだ内容を思い出す時の脳の状態は、電子機器より、言語、視覚、記憶に関わる領域の血流が増え、活発に働いている様子が確認された。(NTTデータ経営研究所や日本能率協会マネジメントセンターの共同研究)』

学校ではデジタル教科書の採択に向けて歩みを進めています。上記のエビデンスからも、学校とその他の時間でバランスを取ることが重要なのはいうまでもありません。いま、こどもたちがいかに「個別最適で協働的な学び」を深めるかという視点も欠かせません。デジタルであれ紙であれ、目的に応じて使い分ける指導者側のリテラシーが問われるのではないでしょうか。

<引用>『論点スペシャル-デジタル教科書の拡大-』(読売新聞朝刊 2025.4.25)


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