229.話を聞きながらメモを取るマルチタスク
先生が板書をした後にその内容について大学生に尋ねたところ、「書いている時には考えられなかったので、わかりません」と返答したという事例があります。
これはこの大学生が特別な事例なのではなく、一般的であると言っても過言ではないようです。書きながら考えるというマルチタスクが身についていないのでしょう。一方、筆記用具や紙を持参せず何も書こうとしないのだが熱心に講義を聞く大学生はひとりやふたりではないようです。
メモを取らない大学生が増えている背景には様々な要因が考えられますが、小学校で「先生の話を聞く時は、聞くことに集中して鉛筆を置きなさい」と指導されていることが一因として挙げられています。話を聞き、文章を組み立て、そして同時に考えるというマルチタスクがおろそかにされることで学びの根幹が揺らいでいるのかもしれません。
社会に出てからは会議や談話のメモを取りながら思考することが当たり前のように求められます。レコーディング機器や自動文字起こしサービス等も一般的になってはいますので、もちろんメモを取ること自体はテクノロジーで賄うことはできますが、社会人に求められるのは、そこに思考が伴うということです。
話を聞きながらメモを取ることやマルチタスクを身につけるトレーニングなどを取り入れて、早いうちに習慣化させておくことが大切だと考えます。
<引用・参照>
デジタル脳クライシス(酒井邦嘉著 朝日新書)
#教育コラム229