145.生徒の答案との対話
生徒の答案を採点することにより、私たちは大きな気づきが得られます。私が講師として新人の頃は大量の採点業務を担っていました。どの問題で生徒の誤答が多いのか「採点を通した研修を受けている」と思って取り組んでいました。「私はこう考えました」という生徒からのメッセージを答案から読み取り、テストの返却時に声をかけることができました。
いま、デジタル化が進み、採点業務の効率化が一般化されています。働き方改革の一環として、講師の業務の軽減が進むことは大きな進歩である一方で「答案との対話」という点においては寂しさが残ります。また、分業化が進んでおり、生徒と向き合い授業の最前線に立つ講師がその答案に書かれている生徒からのメッセージを受け取ることができないケースもあるようです。
講師は、デジタル化や分業化により「素点」「平均点」「偏差値」など数値面での分析に偏り、「該当単元の復習をしましょう」といった漠然としたフィードバックのみを行っているスクールもあります。
生徒からの様々な情報やメッセージを答案から読み取ることができます。何度も消しゴムで消した跡からは生徒の苦悩が読み取ることができます。文字の濃淡からはその時の生徒の心理状況が伝わってくるかのようです。答案を通した生徒との会話を楽しみながら私たちは採点業務を楽しんでいます。「顧客起点」「生徒目線」こそがこの仕事の醍醐味の一つであると私たちは考えています。
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