130.「書くこと」で評価される読解力
「読解力を高める」という宣伝文句からは一般的に「読む力が高められる」と捉えられるでしょう。「読解力」は「文章を読んで理解する力」という文字で構成されているため、そのように捉えるのはもっともなのですが、テスト等で測られる読解力は「問題を読んで理解し、問いに対する解答を書くこと」が求められます。読解力が高くても「書くこと」ができないと「読解力が低い」と判断されます。
私たちは、「聞く」「読む」「書く」「話す」の四技能のサイクルを循環させることが言語指導において重要であると考えています。本来的には「読解力」と「書く力」を関連付けて指導をしなければならないのですが、私たちは子どもの事実に向き合い、優先順位をつけて「聞く」「読む」「話す」を中心に読解力を高める指導をしています。
さて、「書く」ことについては、ヴィゴツキー氏(1935)が、「話し言葉」と「書き言葉」の違いを明確にしています。文字の読み書きができ、話すことが堪能な9歳の子どもが、書き言葉の発達が著しく遅れており、まるで2歳児の水準にあるという事実から出発して、「書き言葉」は特有の困難さを持っていることを明らかにしました。
多くの子どもが苦手とする「書く」ことを「作業」として捉えるだけでなく、少し踏み込んで「言語活動における情報の処理」という点から考えていくことが重要です。そうすることで、四技能の観点からこれまでと少し異なった切り口で向き合うことができるのではないでしょうか。
<参照>
「読解力の指導と書く能力について」大津悦夫
#教育コラム130