脳力道場 開発のお話
みなさん、こんにちは。
本日は『脳力道場』プロデューサーの真栄喜(まえき)さんにお話をうかがいます。
こんにちは。
『脳力道場』の開発はいまから15年前にもさかのぼるのですが、そもそもなぜ、その当
時、ワーキングメモリに注目し、教材を開発したのですか?
当時は、全国の学校でパソコンの配備が進み、小学校児童2人につき1台、中学校では生徒1名につき1台が実現された頃でした。そんな中、ある県の教材販売会社から小学校へ導入するソフトウェアが無いので、何かよいものがないか?という相談がありました。
その時には『脳力道場』を既に作っていたのですか?
いえ。その当時、速読と脳の関係を一緒に研究していた北海道大学(当時)の澤口教授に相談したところ、子どもたちにとって必要なことはワーキングメモリを鍛え、一般知能(流動性知能)を伸ばすことであるとの提案を受け、教材開発に着手しました。
そういうご縁があったのですね。澤口教授と共同研究のような形でスタートしたのですか?
そうです。北海道大学との産学共同研究にて、ワーキングメモリのトレーニングで本当に一般知能を伸ばすことができるかの確認からのスタートでした。
そうした確認はどこで行ったのですか?
幼稚園や私立、公立の小学校です。皆様のご協力をいただき、その効果を確認されたトレーニングが今の『脳力道場』に活かされています。
たくさんの方々のご協力のもと開発されたのですね。
さて、その当時から15年以上が経ち、いまの子どもたちの状況をどう見ていますか?
学校教育においてもワーキングメモリを意識した指導が増えてきました。そのほとんど
が、ワーキングメモリの能力が低い子どもたちを、どうしたらうまく指導できるかというも
のです。
マルチメディア機器等を使って指導が細かくなっているようですね。
その指導の細かさはとても良いことなのですが、一方で、「内容の理解」が優先され、
ワーキングメモリをなるべく使わない学習アプローチになっています。
ということは、少し受け身な状態かもしれませんね。
その可能性がありますね。ワーキングメモリを鍛える機会を失っていると思います。し
かし、授業そのものの目的が「授業内容を理解させる」であるならば、ワーキングメモリを
あまり使わせない授業方法は仕方のないことだと思います。
最近では、アクティブ・ラーニング型の学習や反転授業が取り入れられていますが、子
どもたちにとっては能動的に取り組む機会が増えているということですね。
はい。その通りです。子どもたちが自ら考えるという取り組みが増えてきたことは、ワ
ーキングメモリを鍛える意味では、とても良いと思います。
15年前と変わっていないところはどのようなところですか?
例えば音読や暗唱は、とてもワーキングメモリを使います。
へー!音読が良い、とはよく言われていますが、ワーキングメモリを使うのですね。
はい。音読は声に出して読みながら、その先の文字を確認しておく「準備」が必要です。
また、長期記憶だけに見える暗唱も、声に出して読みながら、記憶している情報を連続的に
取り出す「準備」が必要です。
暗唱というと、かけざんの九九なども同じですか?
その通りです。九九の一つ一つを覚えているだけでは順序良く読み上げることはできま
せん。それらの「準備」にはワーキングメモリの能力が必要です。昔から続いている学ぶ方
法には、一見効率が悪いように見えますが、ワーキングメモリを鍛える機会が散りばめられ
ていると思います
なるほど。それは面白いですね!新たな発見のような気がします。
計算は計算機で、単語の意味調べは電子辞書で、というカタチでは、ワーキングメモリ
を鍛える機会を失っていることを否めません。
わかりやすい例ですね。真栄喜さんありがとうございました!